一昨昨日、私は新潟日報に初めて投稿をしました。内容は、平成20年の12月議会の一般質問で言及した「メディカルスクール構想」について。きっかけは、2月20日のこの新聞記事でした。
「医師不足が言われるなか、国内の三つの私立大学が、医学部新設を目指し、準備を進めていることが分かった。設置認可を国に申請する手続きのため、すでに学内に検討組織を立ち上げた大学もある。医学部新設は30年以上なく、認可されれば1979年以来となる。医師増員を掲げる民主党は看護コースと病院を持つ大学の医学部新設を後押しするとしており、政権交代で機運が高まったかたちだ。医師養成学部・学科については、自民党政権時代の82年や97年の医学部定員削減の閣議決定を受け、新設の審査は行わない規定になっているが、今後撤廃されるとみられる。設置基準の緩和も進めば、他大学にも動きが広がる可能性がある。(朝日新聞)」
「こりゃ新潟県も遅れてはならん!!」と思い立ち、県に改めてプレッシャーをかけるため、世論に訴えるべく「投稿」という手段に思い至ったのです。ところが、メールで投稿したのですが、今現在、全く音沙汰がありません・・・。「載らない人には連絡がないのだろうか」とか「載るにしてもかなりな順番待ち状態で載る時点で連絡があるのか」、それとも「議員の原稿は一切はねる方針なのだろうか」等々、悶々としつつも、掲載される雰囲気を一切感じません。誠に残念ですが、別の手段を考えることにしましょう。
以下、掲載を求めた原稿を載せますので、お時間のある方はご覧になってみて下さい。
<メディカルスクール構想>
「メディカルスクール」をご存知だろうか。「4年間の大学課程修了者の中から医師として働きたいという強い意欲と一定レベル以上の学力を有する者を選抜し、4年間の医学教育を行う大学院レベルの医師養成機関」である。法曹界のロースクールをイメージすると分かりやすい。勤務医不足や地域医療の危機という医師の養成や配置を巡る社会的問題を背景に検討されている構想で、その根底には「医学の道を志す者に求められるものは何か」というテーマもある。
東大名誉教授で日本医学会幹事、日本学術会議の会長でもある金澤一郎氏は次のように述べている。
「医師は患者の持つ病気にだけ目を向けているのではいけない。病気を抱えた人間である患者に目を向けなければならないからである。そう考えると、今の医育制度では一般教養を学ぶ期間があまりにも短すぎる。(中略)いずれは医学の道に進むとしても、それまでに法律・経済・倫理・哲学・芸術など文科系の学問を学ぶと共に、文学・美術・芸能などにも興味を持つ。風流で、こころ豊かで、味わい深い人間性を養っておいてほしい。そうすれば、物事を相対的に見ることができ、必然的に他人の痛みが分かる人間になれることが期待される。」
医師にこれだけの人間性や資質を求めるとなると、多くの場合、高校生で医学部進学を決定しなければならない現状では難しい。そこで、大学卒業者を対象にしたメディカルスクール構想が浮上してくる。
新潟県の医師養成の現状は、人口などが同規模の北陸3県とで医学部入学定員数を比較すると、平成21年度は、北陸3県の4大学の定員435名に対し本県は1医学部で120名と極めて少ない。さらに、平成22年度には北陸はプラス17名の452名、本県はプラス5名の125名でしかない。人口100万人あたりの大学医学部入学定員数を見ても、平成22年度は北陸の146.7名に対し本県は52.3名と全国平均の67.6名よりも低く、改善は容易には見込めそうもない。
こうした状況の中、本県としては、医師養成機関の不均衡を是正するべく、定員増など人口・面積規模に見合った医学部の拡充を国に対し強く要請する必要がある。しかし、切実な要望といえども財政的な問題もあり、政府はなかなか柔軟な対応に転じられないのが実情だ。その点、「メディカルスクール」であれば、既存の枠組みとは別の観点からの議論として、国も新たな施策扱いにできる可能性がある。
医師のなり手である年少人口が減り、患者になる高齢者が増えていく将来を見据えれば、医療の活性化にも現実的な選択肢であろう。それに備え、本県が先駆的な役割を担えるよう今から検討しておくことは決して早くはないし、その際、「メディカルスクール」の卒業生が地域医療(過疎・へき地医療)に向かいたくなるような仕掛け・個性づくりの議論も必要だろう。いずれにしても、本県での本格的な議論を期待するとともに、私も積極的に取り組んで参りたい。