本日、私の所属する「総合交通・防災対策特別委員会」が開かれました。
テーマは大きく2つ。「豪雨対策について」と「原子力災害に対する防災対策」です。
私は、お昼を挟んだ午後の2番手に約30分質問しました。
以下、質問時に使用した私の「質問レジュメ」を公開しますので、興味のある方はご覧になってみて下さいませませ。
<平成23年9月16日 総合交通・防災対策特別委員会 質問>
一、豪雨対策について
1、豪雨空白地域
・2004年に東北大学大学院講師の牛山素行氏が、豪雨空白地域を定義づけた。「最近20年間に発生した最大規模の豪雨として、その地域において同期間中に発生しうる平均的な規模の豪雨より十分小さい値しか記録されていない地域」
・この定義にあてはめた時、本県内に「豪雨空白地域」は存在するか。
「存在していた」⇒今回の新潟・福島豪雨を受けてもなお空白地域があるとすれば、そこへの対策はどのように考えているのか。
「存在しない」⇒県として、豪雨にしっかりと対応する体制を構築しなければならない。今回の豪雨は7.13を超えるまさに「記録的」な豪雨であり、これまでに起こり得なかった災害が起こるようになったと言える。ここに対処するためには、これまでの経験をもとに「未知との領域」に踏み込むこと、つまり「記録的」=「想定外」を「想定」することだと考えるが、その領域のどこまでに踏み込む考えなのか。予算のジレンマもあろうが、県の今後の豪雨の予想・予測の考え方についてとその対応方針について見解を伺う。
・「想定外」を視野に入れた場合、原状復旧でいいのかという議論がある。実際、私が視察した現場でも「原状復旧ではない対応を!」という切実な声を頂く。これに対する県の考え方を伺う。
・今ほど「原状復旧ではない対応を!」と言いながら、本県の景観美を織りなす棚田の復旧については「原状復旧を!」と訴えさせて頂きたい。既に御承知のとおり、棚田の景観美は「不均一性」が大事にもかかわらず、土木作業の復旧の効率性を優先して「均一的」なものに復旧してしまっては、町や集落の復興から離れかねない。この点、強く要望するが、県の見解を伺う。
2、避難勧告にもとづく避難率の低さ
・上越市議会の議論によれば、今回の豪雨で上越市から避難勧告が出た対象は、37町内会の1万8609人。このうち実際に避難した人の数は295人。新聞報道によれば、今回の豪雨では最大で約44万人に避難指示や勧告が出され、このうちの避難者は最大約1万5000人とある。本県全体では発令市町村16、対象世帯149686、対象人数451283とのことだが、そのうち実際に避難した人の数は幾つと把握しているか。
・なぜこれだけの「避難しない人」が生じるのかも含め、住民避難指示・勧告に対し県は課題をどう受け止めているのか。
・知事は「避難の在り方を検証する」と表明したが、現在どのような議論がなされているのか。被災の内容は、各人・各年齢層・各地域・各自治体で大なり小なり異なるはず。従って、それぞれの態様に応じて各自治体が臨機応変に逐次きめ細かい対策を打ち出さなければならない。例えば、高齢者・障害者への対策課題についてはどのように考えているのか。企業への影響についてどのような議論がなされているのか。などなど。議論中というのであれば、「きめ細かさ」をキーワードに、この点を是非盛り込んで頂きたい。
3、避難訓練の在り方
・避難率を高めるには、日頃の避難訓練の在り方が問われることになろう。自主防災比率を高めたからといっても、いざというとき結局はここに行き着く。
・災害に対する関心は大規模な災害の発生によって高まるが,その後急速に風化しやすいものであることがよく言われており、避難訓練を行うことは風化防止にも大きな役割を担うことになる。
・避難訓練の在り方の第一義は基本的に基礎的自治体となろうが、県内の避難訓練の地域によるバラツキはなくすよう努めなければならないし、その底上げを担うのが県の役割と考える。この点、県は今後どのように対応するつもりか。先ほどの答弁では「一律的にこうしなさいという対応はせず、個々の市町村のやることを出来る限りサポートする」との考えを表明したが、検証する過程で、市町村をバックアップする動きは必須だろう。
・洪水ハザードマップが県内129ヵ所で策定されているというが、この策定地域においては特に、優れたハザードマップの情報を共有し、それに基づいて避難訓練が行われ、避難指示・勧告が出たらすぐに対応できるよう、県からも後押しすべきと考えるが、いかがか。
二、原子力災害に対する防災対策
1、EPZ(防災対策重点地域)50キロ設定
⇒福島を受けて、国の方針が示されない中、本県内では独自の動きを見せている。いつまでも国の判断を待っていては県民を危険に晒すことになるため、自治体が自主的に判断できる体制を平時においてできるだけ構築しておく必要は間違いなくある。そう考えると、この動きは非常に素晴らしく、県民にとって心強い対応だ。
・50キロ圏を提案した理由とそこに至る議論の経緯について
・原子力防災指針の「同心円状の範囲設定」を県独自に見直し提言してもいいのでは。実際、福島では国は半径20キロの避難指示圏、半径30キロの屋内待避圏を設定したが、30キロ圏を超えた北西方向の地域において高い放射線量が早期から検出されていた。「斑状の区域設定」を検討すべきではないか。
・今後の被害状況の解析にもよろうが、半径30キロ圏を超えて強度の斑状の核汚染が生じているし、農業漁業関係では100キロ圏を超える。ちなみに、アメリカの想定では半径80キロ圏、チェルノブイリ事故を想定すれば半径300キロ圏。
・もちろん、状況は各自治体・地域で異なることから、あまりに広範囲に設定することはかえって非現実的な想定であり、立地自治体として為すべきことを混乱させかねない。
・福島の重大事故からは、計画的避難区域の設定状況から半径50キロ圏では全住民の長期避難がありえることが実証されたが、見方によっては、これは現場作業員・消防・自衛隊・警察・米軍などのあらゆる関係者・関係各機関の必死の協力でたまたまこの範囲ですんだのかもしれず、もっと深刻な被害を県としては「想定」する必要もあるのではと考えるが、県の見解を伺う。
⇒国との協議の上で決定する以上、国の方針が決まるまでは県独自の避難基準策定は難しいかもしれない。しかし、災害対応において時間の遅れが明白になった場合には自治体判断が可能となるのだから、自治体独自の判断が迫られる事態にも直面しかねない。従って、いざという時に備えて今から県としての考えをまとめることは必須と考えるが、見解はいかに。
2、基金の積み立て
⇒県は50キロ圏に拡大する案を提案した。現行は、国はEPZ県内の防災対策には、国から該当する都道県に「放射線監視等交付金」「緊急時安全対策交付金」が支出されており、昨年度は全国で計80億円にのぼった。交付金は主にEPZ県内の市町村で使うように限定されているため、EPZ県外の自治体は独自に対策費をねん出する必要がある。
・国の原子力防災指針の見直しの結果、県提案の50キロ圏に至らなかった場合、県は圏外自治体に対し独自の対策費をねん出するという考えなのか。また、このほか諸々にかかる予算の扱いについてはどうか。せっかくまとまって勉強会等を開催し独自の動き・流れを作ったのだから、仮に今後国の方針に制限されてしまった場合でも、その範囲での対応に収めるというよりは、この機運を県主導で高め、更なる緊密な連携をとることが県民への不安解消に繋がるはず。もちろん、仮にそうなった場合でも国からの対策費の補助は強く要望すべきだし、私もサポートさせて頂く。
・50キロ圏を提示した以上、関係自治体には原子力防災を担う部署を備えるべきだろう。人材派遣・提供などを含め、県からのバックアップを図るべきだし、圏内に指定された自治体では、原子力・放射線に関する教育を充実させる必要があると考える。
・このように原子力災害対策には終わりの見えない膨大な資金が必要となるため、県ならびに50キロ圏内自治体は今からそのための基金を積み上げる必要があるとともに、そのための資金を国および事業者に要求すべきと考えるが、いかがか。
3、広域連携
⇒新潟と埼玉、群馬の3県知事が共通課題を協議する「第3回三県知事会議」が9月14日高崎市内のホテルで開かれ、東日本大震災を受けて県境を越えた災害に対応する通信の共通マニュアル作成や、被害調査員の共同演習について合意。また、すでに災害時等における福島県、茨城県、栃木県、群馬県、及び新潟県五県相互応援に関する協定の調印も行っている。
・一方、9月10日の新聞報道によれば、本県から他県避難を想定すべきではとの問いに対し、知事は「福島事故の影響範囲を見ると、柏崎刈羽原発で事故が起きた場合でも他県への避難を想定する必然性は必ずしも高くない。誤ったメッセージを出せば風評を助長する。仮定の話はしない」と述べている。このギャップについて県はどう考えているのか。
・厳然たる事実として、世界最大級の原発を本県は擁している以上、「仮定の話はしない」というスタンスよりも、逆にこれからの時代「これだけ検討し、しっかりと対応しているんだ!」という気概を見せた方がむしろ県民・企業の不安解消に繋がると私は考える。本県の信頼性確保の観点から、他県との連携推進は必須と考えるが、いかがか。
・なぜ北信越との連携を行わないのか。県庁から見れば首都圏や関東を見据えるのだろうが、上越地域から見れば、いざ災害が起こった時には北信越との連携が不可欠となる。上越地域をも見据えた広域連携として北信越、特に北陸との連携対応にもっと力を込めて頂きたいが、いかがか。
・6月議会で、私は「仮に起きた場合、被害を少なくするためには、県域を越える広域的な被害をあらかじめ予想し災害に対する予防対策や災害応急対策等の円滑な実施のために都道府県間の連携や調整を図る「都道府県相互間地域防災計画」を策定すべき」と提案したが、知事からはいい返事を頂けなかった。今行っている協定がその役割を担うのだろうが、北陸との連携が取りづらい現状において、国に対しこの計画を策定するよう訴え、そこからも北信越との広域連携の実現に向けられるのではないか。改めて県の考えを伺う。
【最後に】 広域複合災害への対応
・今回の事故で自然災害と原子力災害が同時に起こる可能性が高いことが示された。
・考えたくはないが、大地震、津波、原子力災害、余震、豪雨と立て続けに複合する可能性も否定できない。「想定外」を「想定」する姿勢を貫けば、この点の議論も間違いなく不可欠であり、ここをも踏まえた議論を行うことを強く要望する。
・県は平成21年9月、防災計画に「複合災害対策」を新たに追加したが、これから「広域複合災害対策」の言葉も盛り込まれるに違いない。県として今からこの視点で対応し、「想定外」を「想定」する意気込みで、県民の不安払しょく・解消に繋げて頂くことを要望する。
以上